猫を完全室内飼いにする理由。

      2016/04/16

今、空前の猫ブームなのだそうです。

猫の飼育頭数は増加の一途を辿り、今年中には、犬を追い抜く見込みであるとか。

統計を見る限りではブームと呼べるほど猫の飼育頭数が増えてはいませんから、おおかた、犬が売れなくなって困ったペット業界が代わりに猫を売ろうとして煽っている、というところなのでしょうが、少なくとも飼育頭数が減っていないのは確かです。この5年で100万頭以上減ってしまった犬に比べれば、猫の人気は安定していると言えるでしょう。ひょっとしたら読者の中にも、猫を飼いたいと考えている人がいるかもしれませんね。

長年、たくさんの人が地道な啓蒙活動を続けてくださったおかげで、今、新しく猫を飼おうとする人は、完全室内飼いを前提としていることがほとんどです。けれども、地域や年齢層によっては、「猫は外に出すもの」と考えている人もまだ少なくありません。

もし、これを読んでいるあなたがそうだとしたら、私は1人の猫好きとして、また獣医師として、忠告をしなければいけません。猫を、外に出してはいけませんよ、と。

ここでは、その理由を説明したいと思います。

猫は害獣である。

第一の、なによりの理由は、家から1歩外に出た猫は、害獣としてふるまう、ということです。

沖縄では、貴重なヤンバルクイナやアマミノクロウサギを猫が捕食していることが報告されています。

世界的にも、猫が侵入したことによって打撃をうけた鳥類のコロニーは少なくありません。

オーストラリアでは、野生動物を猫の被害から守るため、野良猫の駆除を決定しました。

猫は、貴重な生態系に悪影響を与える、侵略的外来種のひとつなのです。飼い猫であっても、外に出る猫は、外に出ている間野良猫と同様にふるまいます。生態系を守るためには彼らを野放しにするわけにはいきません。室内飼いと外飼いと、どちらが猫にとって幸せか、と問う以前に、猫は、野外にいてはいけない生き物なのです。

環境保全という視点から見れば、完全室内飼い以外に、そもそも選択肢はありません。

猫は昔から外で暮らしてきたじゃないか、という方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、それは単に、私たちが猫を飼い始めてから5000年の間、間違え続けてきただけなのです。確かに今更ではありますが、間違いに気づいてしまった以上、直すほかはありません。

責任は人間にある。

忘れてはいけないのは、猫をそのような厄介者に仕立て上げてしまったのは人間である、ということです。

あまりにもありふれた存在であるため、野良猫を、タヌキやキツネのような野生動物と同列に考えている人もいるかもしれません。しかし、猫はあくまで家畜。野生動物ではありません。

家畜とは、野生動物をもとに人間が作り出した人工の動物です。これはどういうことかというと、自然界には居場所のない動物だ、ということです。

もちろん、どんな家畜にももとになった野生動物が存在しますが、家畜たちは長い時間の中で、その野生動物とは大きく異なる存在に作り変えられました。ですから、もとの野生動物の個体群が存在していたとしても、もうそこに戻ることはできません。彼らは、人間の管理下にいるしかない存在なのです。

それにも関わらず、野外に放逐されたことで、猫はネズミと並ぶ、最悪の侵略的外来種になってしまいました。

すべての責任は、自然界には存在できないものに猫を作り変えておきながら、管理下において面倒をみようとしなかった人間にあるのです。

自然界ではもはやどんな場所でも厄介者にしかなることのできない猫たちの存在を、最後まで引き受ける責任が私たちにはあります。猫を厄介者ものにさせないまま、天寿を全うさせる。その唯一確かな方法が、完全室内飼育なのです。

野外にいることは、家畜である猫にとってまったく自然なことではありません。外に出たがるからと猫を野に放つことは、遺伝子工学で蘇らせた恐竜を、かわいそうだからと野に放つのと同じこと。管理者としての責任の放棄でしかないのです。

健康面でも室内飼育が望ましい。

完全室内飼育は猫にとってもメリットの大きいものです。

野良猫の平均寿命が5年程度であるのに対し、室内飼育されている猫の平均寿命は15年ほど。これほどの差があるということが、室内飼育が好ましいなによりの証拠と言えるでしょう。室内飼育によって、猫は、ずっと長い間、健康に生きることができるのです。

もちろん、外飼いであっても人間が餌を与える猫は、野良猫よりは長生きすることが多いです。しかし、屋外は、猫にとって安全な空間とは言えません。事故に遭う危険もありますし、頭のおかしい人や犬に襲われる危険もあります。猫同士の喧嘩で怪我をするかもしれませんし、それがもとで猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスに感染するかもしれません。ネズミやカエルを食べて、寄生虫に感染するおそれもあります。実際、外飼い猫の平均寿命は8〜9年ほどで、室内飼いの猫には及びません。

長生きできても、自由に外を歩けなかったらカワイソウ、と思う人もいるかもしれませんね。

でも、その心配は無用です。

猫は、外に出られなくても不便を感じることはないからです。6畳間ほどのスペースがあれば、満足してそこにいます。

今まで外に出ていた猫を室内に入れれば、はじめのうちは外に出たがることでしょう。でも、2ヶ月もすれば猫は外の世界のことなんてすっかり忘れて、部屋の中で落ち着くようになります。犬と違って、もともとそれほど広い空間を求める生き物ではないのです。猫の場合、室内に「閉じ込める」ことはまったく虐待ではありません。

以上のことから、猫にとっても、室内飼育が望ましいと言えるのです。

猫を外飼いすることは、自然にとっても、猫にとっても不誠実なことだと私は考えています。

猫を飼う人は、完全室内飼育を徹底してほしい、と思います。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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