剖検の必要性。

      2016/03/18

 病理医が主人公の『フラジャイル』という漫画があります。
 今、テレビドラマが放送されているので、それで知ったという方も多いかもしれませんね。
 この漫画に、主役の岸京一郎が、剖検(亡くなった患者の直接死因を究明するために解剖すること)をしながら、その意義について語る場面が出てきます。

臓器は雄弁だ
検査値やCTよりずっとな

だがね
もう何をやろうが患者自身が生き返るわけじゃない

じゃあなんのために?

見ず知らずの未来の患者が
もう少しだけうまく治療される

剖検される患者も同意した家族も医者もそれだけのためだ

(中略)

「未来の誰かの命のため」ってやつだ
やった剖検には必ず意味がある

 ここで岸が語っている内容は、獣医療にも当てはまるものです。
 特に、家畜に比べて研究の遅れているエキゾチックアニマルでは、剖検によって得られることはとても多い。なにしろ、ものによっては生前に確定診断がつかず、死因もわからないまま亡くなってしまうことも少なくないのですから。
 病気で苦しんだ動物の体に、死後さらにメスを入れることには抵抗がある人は少なくないかもしれません。岸が言っているように、剖検をして死因を究明したところで、生前に施された治療の適否を評価したところで、死んだ動物が生き返るわけでもありません。けれど、そこで得られた知見は、未来に同じような症状を患った動物を治療するとき、必ず役に立ちます。
 だから、もし、自分の動物の主治医から剖検の申し出があったときには、できるだけ、それを了承するようにして欲しい、と私は思うのです。
 それは、動物の死を無駄にせず、未来につなげるための営為でもあるのですから。

 
1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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