猫を信用しなければならない。

   

 今のアパートに引っ越してきてから、猫と一緒に寝るようになった。
 猫をベッドに上げるのは、実に3年ぶりのことである。
 これまで、私は猫たちを寝室には入れなかった。
 寝室に爬虫類を置いていたということもあるけれど、なにより、布団で排泄をするという困った癖を、猫たちが持っていたからである。
 保護してきたばかりの頃、猫たちは、私の布団でばかり排泄をした。用意したトイレを使わないわけではないのだけれど、私が見ていないところでは、布団で排泄をしたがるのだった。朝起きると、たいてい布団の足元の方に、おしっこをした痕が残されていた。あっという間に、布団には臭いが染みつき、洗っても落ちなくなった。いつまでもそれを繰り返されてはたまらない。だから、前のアパートへの引っ越しを機に私は布団を買い換え、猫を寝室へ入れないようにしてきたのだ。
 しかし、今回の引っ越しで、事情が少し変わった。
 済んでみて初めてわかったのだけれど、今のアパートは防音性にやや劣るのである。
 猫が鳴くと、けっこう響く。
 前のアパートでは、リビングと寝室のドアを両方閉めると、リビングにいる猫の声はほとんど聞こえなくなった。一方で今のアパートでは、ばっちり鳴き声が届く。ドア2枚挟んで届くのならば、アパートの他の部屋にも届くおそれがある。
 うちの猫たちは、どうやら私がいない時はおとなしくしているようなのだけれど、たとえばドアの向こうに私がいる、ということがわかっている場合には、「出てこい!」あるいは「いれてくれ!」としつこく鳴き続ける習性を持っている。声が届くのならば、それが苦情につながらないとも限らない。ということは、寝室から猫を締め出すのは、それはそれでリスクのある選択だ、ということになる。
 どうしたものかと考えた末に、寝室に猫を入れてみることにしたのである。
 布団に限らず、タオルや服など布の上に好んで排泄をしていた猫たちだけれど、トイレをしっかりと整えてからは、ほとんどそういうことはなくなっていた。少なくとも京子は、トイレ以外の場所ではまず排泄をしない。まだらの方も、掃除をきちんとしている限り、トイレを利用してくれる。
 その状態で3年も過ごしたのだから、さすがにもう大丈夫なのではないか、と判断したのである。
 念のため、掛け布団には撥水加工の施されたカバーをかけ、私は猫たちに寝室を開放した。
 結果は上々であった。
 今のところ猫たちは、ベッドをベッドとして利用してくれている。
 大丈夫だ。こちらがトイレの管理をきちんとすれば、大丈夫だ。
 私は、ほっと胸を撫で下ろした。
 そして、猫を抱きしめて眠るという、猫飼いの醍醐味を味わえる喜びに浸った。
 問題はと言えば、まだ無意識のうちに、私が猫たちを警戒してしまっていることである。
 猫を寝室に入れてから、私の眠りは浅くなった。
 どういうわけか、4時間くらいで目が覚めてしまう。
 真夜中に目が覚めて、それからは眠れない。
 猫の頭を撫でながら、朝を迎えることになる。
 おかげで、夕方になると睡魔に襲われるようになってしまった。
 あくびを噛み殺しながら、仕事をしていたりする。
 それが疲れから来るものと思われているのか、上司は、「今はまだあんまり残業とかしないで早く帰りなさい」と言ってくださる。
 まだ仕事に慣れず要領が悪いので、あまり溜め込まないように片付けておきたい、という気持ちがあるものの正直眠いから、お言葉に甘えさせていただくわけなのだけれど、帰りの電車の中でいつも思う。
 猫が原因ですだなんて、口が裂けても言えないなぁ、と。
 いや、もうここに書いてしまったんだけど。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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