動物に何を求めているのかを考えること。

   

 以前、どこかの観光地で、リードに繋いだ猫を抱いて歩いている人を見かけたことがある。
 どうやら、旅行に猫を同伴させているようだった。
 猫は、いささか緊張した面持ちをしていて、私は、なんだかなぁ、と思った。
 見知らぬ場所に連れて行かれることに多少慣れているのだとしても、そこはやはり猫だから、慣れ親しんだ自宅にいるか、少なくともペットホテルの落ち着いた環境の中にいた方が安心であることは間違いないだろう。保守的で、静寂と平穏を好む猫は、基本的に、旅行に連れて行く動物ではない。
 動物と一緒に旅行がしたいなら、犬を飼うべきだったんじゃないだろうか。そう思いながら、私はその人を見ていた。
 こんなふうに、動物に求めるものと、飼っている動物とがちぐはぐな人を見かけることは少なくない。
 スキンシップをはかりたくてたまらないのに、爬虫類を飼っている人。
 見た目がかわいければそれでいいのに、犬を飼っている人。
 なんで、飼う前にもうちょっとよく考えなかったのだろうか、と私は思ってしまう。
 動物には、それぞれ特徴がある。
 ペットに向いている部分があり、ペットに向いていない部分がある。
 飼い主の要求に合致する部分があり、要求に合致しない部分がある。
 それらは動物によって異なり、多くの場合、ある動物は別の動物の代わりにはならない。同じ犬であっても、シーズーはボーダーコリーの代わりにはならない。サバンナオオトカゲは、フトアゴヒゲトカゲの代わりにはならない。
 動物の特徴と、その動物に求めるものがあまりに食い違ってしまっていると、人にとっても動物にとっても、不幸な結果を迎えることになる。
 スキンシップを好まないのにべたべた触られる爬虫類はいずれストレスで参ってしまうだろうし、ぬいぐるみが欲しかっただけの飼い主に飼われてろくに躾もしてもらえなかった犬は、人を咬むからと、病気になっても診療拒否されてしまうかもしれない。
 逆に、自分の要求と動物の特徴がどんぴしゃで合っている場合には、飼育生活は、それはそれは幸せなものになる。
 だから、動物を飼うときには、自分がその動物になにを求めているのかを、よく考えた方がいい。
 ビバリウムガイド73号の巻頭特集に、冨水明さんがこんなことを書いていた。

 中学生や高校生が「5千円しかないんですけど、5千円で買える種はいますか」というのは昔からある。わりと筆者は「いらないものを飼ってもしょうがないから、欲しい種を決めて、足りなきゃ貯めなよ」と言ってしまう。こういった子たちは、とにかく爬虫類が好きで、爬虫類ならなんでも飼ってみたい層である。ゆえに本当なら見繕って売ってあげれば良いのだが、どこか違う気がするのだ。

 私がこの考えに同意するのは、今書いたことがあるからだ。
 もちろん、爬虫類ならなんでも飼いたい中高生は、爬虫類ならなんでも丁寧に飼育するのだと思う。
 けれど、「ほんとうに欲しい種」を決める中で、自分がその動物になにを求めているのかをしっかり考えることは、その後の飼育生活をよりよくする上で、不可欠だと思うのである。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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