竹田城に行けなかった話
2016/03/13
兵庫県に来ている。
観光のためである。
東洋のマチュピチュと呼ばれている、竹田城を観に来たのである。
早い時間の方が雲海が出やすいということを聞いたので、昨日から兵庫入りしている。それで、朝のうちに城へ向かおうと考えた。予想される景色は、家でパソコンに向かう夜を、1日余分に削ってもお釣りが来るだろうと思ったからである。
昨日は、ブログを更新できないことにイライラしながら、ホテルの部屋に閉じこもっていた。
そう。ネタが見つからないなどの理由でたとえパソコンに向かったとしても必ず更新できるわけではないのだが、それでも、更新する機会そのものを失うと、私はいささかイライラする。
依存症と申し上げても差し支えあるまい。
なかなか外へ出かけないのはそのためだ。
我ながら終わっていると思う。
けれども、そんな私が、今回は頑張って家を出てきた。
竹田城を見るために。
それなのに!!!
朝起きたら外は雨だった。
私は絶望した。
これでは、雲海もくそもあったものではないじゃないかと。
竹田城の標高は353m。これでは、雨雲をぶっちぎることなんてできない。やつらはだいたい500m以上のところに現れるからだ。雨が降っても、東京タワーのてっぺんは見える。
借りに眼下の谷に雲海が出ていたとしても、これではあまりよい景色にはならないだろう。あれは上空が晴れていてこそ映える類のものであるはずだからだ。
またこれだ。
私は自らのスペックを嘆いた。
入学式、卒業式、修学旅行……。ここぞというときに、私は逃さず雨を降らすことができる。登場すると天気が変わる。いやらしいポケモンだ。
それがここでも発揮されてしまった。
なんてことだ。
……いやしかし。
私は挫けそうな心を奮い立たせた。
せっかく来たのだ。
雲海はなくとも、城跡からの眺めには、あるいは城跡そのものには、見るべきところがあるはずだ。
それを見に行こう。
そう思い、私は播但線に乗った。
姫路から1時間半、電車に揺られる。
途中で見える山並みの谷筋に、うっすらと霧がかかっているのが車窓から見える。
うむ。
雲海とは行かぬとも、これならばなかなかに幻想的な景色が拝めそうである。
沈んでいた心が再び踊り出す。
うきうきしながら、私は竹田駅に降り立った。
行くぞ、竹田城!
うん、あそこにタクシーが止まっているな。
荷物もあるし、中腹の駐車場までは、乗せてってもらおう。
私は、はやる心を抑え運転手に声をかけた。
「あの、竹田城に行きたいんですけど」
が、しかし!
運転手の返事は想像を超えていた。
「行けないよ」
と運転手は言った。
「えっ?」
「今日は入山禁止なの」
「?」
私の頭は激しく混乱しており、運転手の言葉の意味がよくわからなかった。
ん? 入山禁止?……どこが?
私が惚けた顔を晒していると、運転手は苦笑いしながらゆっくり説明してくれた。
「今、工事してるでしょう。その機材を下ろす日なんだよねー。だから一般の人は入山禁止」
そこでようやく、言葉の意味が頭に届いた。
そっかー、入山禁止かぁー。
……ってなんだとおおおおおお!!
天候なんてどうでもよかった。
そもそもお呼びでなかったのだ。
でも! そんな大事なこと、言っといてくれないと困るじゃないか!
しかし運転手は言った。
「市のホームページに書いてあるけどねー」
私は冴羽遼もかくやというスピードでiPhoneをポケットから取り出し、女子高生もかくやというスピードで操作した。
果たして、確かにそこには入山禁止の旨記載されていた。
運がいいとか悪いとか、そういう問題ではなかった。
確認不足。
すべては私が悪かった。
なんという徒労だろうか。
せっかくここまで来たのに。
この努力はなんだったんだ。
昨日、ブログを書くのを我慢したのはなんだったんだ!!!
私は、自分の甘さを呪った。
あまりにも悔しかったので、思わずこうして、ケータイからブログにアクセスしている。
ちなみに、昨日せっかくだからと思いついて観に行った姫路城は、天守閣が工事中だった。
俺はなにしにここまで来たのだ。
向かい合っているiPhoneは、心なしか腹を立てているように思えた。
せっかく俺がスマートなのに、お前が能無しじゃ意味がねぇよ、と。
まったくだ。
深く反省せねばならない。