飼育容器は広めがおすすめの理由

      2016/02/05

 トカゲモドキのペットとしての強みのひとつは、比較的小さなスペースで飼育が可能なことである。
 ケヅメリクガメを飼うためには6畳間くらいなスペースが必要になってくるけれど、トカゲモドキならば、シルバニアファミリーの家くらいのスペースがあれば余裕で飼える。6畳間をまるまる提供するならばブリーダーになれるだろう。机の片隅のわずかな空間で楽しむことができるというその省スペース性が、トカゲモドキのキングオブペットリザードの座を不動のものにしている。
 とはいえ、爬虫類の飼育とは動物の行動を見て楽しむものであるという原点に立ち返ってみるならば、あまり狭いスペースで飼育することは得策とは言えないかもしれない。
 多くの場合、飼育スペースが広ければ広いほど、動物は魅力的になるからである。
 たとえば生態から言って、私を飼育するには4畳半があれば十分だろう。しかし、4畳半で飼育された私は、朝から晩までベッドの上に寝転がって本を読んでいるだけでほとんど動かないはずだ。それはとてもつまらない光景である。しかし、渋谷区を自由に歩き回れるようにしていただけるならば、センター街で不良に怯えたり、表参道でリア充に嫉妬したり、広尾で人生の不平等を嘆いたりと、様々な行動をお見せすることができるだろう。
 動物の場合もそれと同じで、基本的には、自由度が増すほど、様々な行動を見せてくれるようになるのだ。
 だから、とくに初めてその動物を飼うような場合には、なるべくなら、広めのスペースを用意してやるのがよい。
 私は昨日、あらためてそのことを痛感した。
 というのは、スペースがいささか不足していたために、ある「もくろみ」が外れてしまったからである。
 昨日、トカゲモドキたちに餌をやるときに、私は、彼らのある行動を動画で撮影しようと思い立った。
 「トカゲの尻尾振り」である。
 トカゲモドキの仲間は、餌の昆虫に狙いを定めるときに、なぜだかわからないが、尻尾をL字に持ち上げ、小刻みに震わせるという行動をとる。餌にそろり、そろりと近寄っていくにつれ徐々に尻尾が持ち上がり、ゆらゆらと揺れ、その揺れがだんだん激しくなっていくのである。たいていは餌に飛びかかるタイミングで、その揺れが最高潮に達するのだが、餌が自分から遠ざかるようだと、尻尾を振りながら追い掛け回したりする。
 雰囲気としては、猫がねこじゃらしに飛びかかる前に足踏みをする感じに似ている。見るからに昆虫に警戒されそうな動きであり、そんなことをする理由がまったく思いつかないのだけれど、彼らの内心の昂りが表れているようでとても面白い。
 私は過去に、弟が飼っていたトカゲモドキがそれをやるのを見たことがあった。自分で飼い始めてからはあまり意識はしていなかったのだけれど、これをきちんと録画しておいたらおもしろいかなと思い、自分のトカゲモドキがそれをするところを撮影しようと考えたのだ。
 そこで、ニシアフリカトカゲモドキのケースにコオロギを放りこみ、iPhoneのカメラを起動した。
 コオロギに気づき、凝視するトカゲモドキ。来るぞ、と思い録画ボタンを押す私。
 尻尾がふわっと持ち上がる。これからだ、振るぞっ。私の期待は高まったのだがその瞬間。
 ぱくっ。
 なんとトカゲモドキは、尻尾を振らずにコオロギに食いついたのだった。
 あっ。
 拍子抜けする私。
 原因は明らかだった。コオロギまでの距離が近すぎたのである。ケースに放りこまれたコオロギは、あっという間にトカゲモドキの方へ駆けていった。だから、トカゲモドキはコオロギを追いかける必要もなく、その場で「いただき!」となってしまったのだ。獲物に歩み寄るうちに尻尾の振りが激しくなっていくわけだから、向こうが簡単に近づいて来られる広さでは駄目だったのである。
 もっとケースが広くて、コオロギが遠くにいるままならば、トカゲモドキは自らコオロギを追いかけ、しっかりとした尻尾振りを披露してくれたに違いない。
 適正な飼養という観点から言えば、20cm×30cmの床面積があればトカゲモドキの場合は十分と言われている。だから、それくらいなら尻尾振りもきちんとやってんのかな、と思っていたが甘かったのだ。そういえば実家で弟がトカゲモドキを育てていたときは、余っていた45cm水槽を拝借していた。
 スペースが足りなかったせいで、私は決定的瞬間を撮り逃した。
 だから、飼育を楽しむためには、ケージは広いに越したことはないと痛感したのである。
 新しく爬虫類を飼おうというみなさまは、覚えておかれるとよいと思う。
 とはいえ爬虫類の場合、「せっかく渋谷区に出れるようにしてやっても結局週6日は4畳半に引きこもってんじゃん」という私みたいなことになることも少なくないわけなのだが。
 尻尾振りに関して言えば、とりあえず今度は餌やり用に広めの容器を用意して、リベンジしたいと思っている。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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