アルビノと視力

      2016/03/18

 コーンスネークでもボールパイソンでもヒョウモントカゲモドキでもニシアフリカトカゲモドキでもアカミミガメでも、商業的に繁殖されている多くの爬虫類で、アルビノ、つまり先天的に黒色色素(メラニン)を持たない系統が固定されている。
 代表的な色彩変異であり、この変異を持つ個体は通常の個体よりも人気を集めることが多いが、メラニンの欠乏は、個体に悪い影響を与えることが少なくない(だからこそ、人間のアルビノは難病指定されている)。
 紫外線から身を守ることができないというのが、その最たるものである。
 黒い色の物質は、紫外線を通しにくい。だから生物は、メラニンを合成して黒を見にまとい、紫外線から身体を守っているが、アルビノにはそれができない。そのため、強い紫外線によって炎症を起こしやすく、皮膚に悪性腫瘍が発生する危険性も通常に比べて高い。
 アルビノが固定されている爬虫類のほとんどがヘビであるのは、そのためである。ヘビの多くは夜行性であり、強い紫外線を浴びなくても生きていくことができる。だから、アルビノであっても生活にさほど支障をきたさない。野生下では水生のカメにも比較的多く見つかるが、これは水中に逃げることにより紫外線の影響を回避できているからだと考えられている。昼行性で、紫外線を浴びなければビタミンDを合成できない地上性の爬虫類の場合は、紫外線の害を受けやすいアルビノ個体が生きていくことは難しい。
 もうひとつの大きな影響は、視力に異常が出やすいということである。
 普通、動物の目は黒い。これは伊達に黒いのではない。黒色の組織で裏打ちすることによって、眼球内での光の散乱を防ぎ、網膜が鮮明な像を得ることができるようにしているのである。
 メラニンを持たないアルビノ個体は、光の散乱を防ぐことができないため、どうしても像がぼやけてしまう。
 また、眼球内のメラニンは、目の中の「黄斑」と呼ばれる、ものを見る際に中心的な役割を果たしている部分の形成にも関わっている。ヒトの白皮症(アルビノ)患者は、多くの場合、黄斑が正常に形成されておらず、そのことも視力障害の原因となっていることがわかっている。爬虫類の場合は定かではないが、同様のことが起きている可能性はある。
 ヒトと場合、眼鏡をかけても視力が1.0に届かないことがほとんどであるという。
 さらに、強すぎる光をメラニンによって遮断することができないので、後天的にも視細胞に障害を受けやすく、適切にケアをしなければ失明するおそれもある。
 ヒトでは、緑内障を発症するリスクも通常より高いそうである。
 無論、ひとくちにアルビノといっても、メラニンの欠乏具合やそれに起因する障害の重さも様々であるので、どの個体も必ずそうなる、というわけではない。トカゲモドキのアルビノのように目は黒いままの個体であれば、それほどの障害は出ないだろう。しかし、マウスのように虹彩も瞳孔も赤く見えるような個体は、重度の障害を伴う場合があるということは了解しておいた方がいい。
 アルビノ個体は綺麗だし、ついついその色柄にばかり注目してしまうものだけれども、その個体は実はしんどい思いをしているかもしれない、ということは、心の片隅にとどめておきたいものである。手に入れたら大切にしてあげてほしい。
 アルビノのカメレオンとか、絶対長生きできないだろうなぁ……。

参考

www.derm-hokudai.jp/jp/shinryo/pdf/16-01.pdf
茨城県 眼科 山王台病院(白内障手術,緑内障手術,網膜硝子体手術) | アルビノ 眼白皮症
 

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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