スマホカメラは飼育者にとって福音である。

      2016/03/18

 またしてもやまももの話をする。
 くどいと思われるかもしれないが、目下、脳内の半分くらいはやまもものことで占められているのでしかたがない。
 動物が下痢をしているとき、気にしなくてはいけないのは脱水である。
 腸粘膜が傷害を受けて水分の吸収能力が低下したりそこから体内の水分が逃げていくことによって、または毒物や病原体を洗い流すために粘膜から水分を分泌することによって、動物は下痢をする。いずれにせよどんどん水分が出て行くことになるため、症状が長引くと、身体の中の水分が足りなくなってしまう。極端な脱水状態になると血液量が足りなくなって循環不全を起こしたり、その結果腎臓や肝臓などの機能が低下したり、血管内で血液が凝固してしまったり(これが起きたらヤバイ)して命に関わることがある。
 だから、動物が下痢をしている場合には、脱水していないかどうかを常にチェックし、必要であればすぐに補液を行えるようにしなくてはいけない。
 そこで私も、やまももの下痢に気づいたときにはまず脱水の程度を確かめた。
 そのとき、役に立ったのがiPhoneのカメラだった。
 動物が脱水しているかどうかを評価する指標のひとつに、目が落ち窪んでいないかどうかというものがある。そうなっているとかなり重い脱水状態ということになる。
 ところが、やまももの場合は、もともと眼窩の脂肪が薄いようで、健康だったときから、尻尾がまるまるとしているにも関わらず目の下の溝が目立っていた。だから、脱水の程度を見極めるためには、健康なときの顔つきと見比べてみる必要があった。
 とはいえ、記憶だけでそれをするのは困難だった。
 そこで、iPhoneの中に記録されている健康だったときのやまももの写真と見比べて、脱水具合を確かめたのである。
 画像情報に関して言えば、その情報量は飼育日誌に比べて圧倒的であった。
 健康チェックが月に1度なのに対し、常にポケットに入っているiPhoneを用いた撮影は数日おきには行われていたからである。「寝顔がかわいい」とか、そういう医学的にはほとんどどうでもいいような理由によって。
 ケータイカメラというお手軽な撮影装置が発達したことによって、私は、頻繁に動物の写真を撮るようになった。
 それが結果的に、動物の健康管理に際して有益な情報を提供することになったわけだ。
 手元にフィルムカメラしかなかったら、そんな風にはならなかったと思う。
 テクノロジーの進化は、飼育者にとって、図らずも福音となっているのだ。
 写真はね、ばしばし撮ったほうがいいですよ。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

 - 飼育日記