爬虫類の飼育温度は高めがいい理由

      2016/04/16

 トカゲモドキたちのケージの下に断熱材を敷くようにしたら、それまで32℃くらいだったシェルター内の床温度が、日中には36℃を越えるほどまで上昇した。
 断熱材を敷いたとたん、健康なくぬぎは、シェルターの外に出て、28℃くらいの場所で寝ることが多くなったから、通常トカゲモドキが休息するには、36℃というのはちょっと高すぎるのかもしれない。
 けれども、温度が上がってから、調子の悪かったやまももは、明らかに元気になった。
 それまで、潰して体液を滴らせたコオロギをなめさせると、しぶしぶ1、2匹食べてくれる程度だったものが、病気になる前とほとんど変わらない勢いでコオロギに食いつくようになったのである。
 尻尾をぱらぱらと振りながら。
 もちろん、それ以前から徐々に快方には向かっていたわけであるから、環境の変化だけが理由であるとは言い切れない。しかし、タイミングから考えて、その回復ぶりに、シェルター内の温度の上昇が大きく影響していることは間違いなさそうだった。
 それくらい、劇的な変化だったのだ。
 今日もやまももは、くぬぎに比べて明らかに長時間、36℃のシェルターの中に居座り、ぬくぬくとお腹を温めている。
 爬虫類キーパーとしてはまだまだ青い私は、そんなやまももの姿を見て、やっぱり温度って大事だな、と思い知らされたのである。
 そして考えたのは、ケージ内に設ける温度勾配の範囲は、一般的に「何度から何度まで」とされている幅よりも広くしておいた方がいいのではないか、ということだ。
 これまで、トカゲモドキたちのケージ内は、温度の高いところが32℃、低いところが27℃くらいであった。これは一般的な温度設定だと思うし、健康なトカゲモドキたちはそれで元気にしていた。
 けれども、今回のやまもものことで、体調を崩した個体には、より高い温度の場所が必要だったことがわかった。
 とすれば、ケージ内には、はじめから、より高い温度の場所が存在したほうが望ましいのでは、と私は思った。
 「病気」の治療において温度が重要な役割を果たすならば、「病気」以前の「違和感」くらいな段階なら、温度条件だけで治ってしまう可能性があるからだ。
 やまももにしたところで、軟便を排泄し始めるよりも前から、「なんか、お腹がごろごろするな」くらいなことは感じていたに違いない。もしその時点で、調子を整えるためにより高い温度の場所へ行くことができていたら、私が気づかないままそこで異常は治ってしまって、ひどい下痢につながることはなかったかもしれない。
 予め病気の回復に適した場所を用意しておけば、治療が必要になるような状態になる前に、動物自身が自分で、その場所へ移動して身体を癒す行動をとり、病気を予防できる可能性がある。
 ちょうど、「今日はちょっとだるいな」と感じた人が、いつもより早めにベッドに入ることによって、病気になる前に体力を回復しているように。
 私たちが日々、病気とは言えない程度の体調の悪さと付き合っているように、爬虫類だって「今日はだるいな」と感じる日はあるだろう。そこでうまく身体を休ませられるかどうかが、その先病気になるかどうかに関わってくるのは人間でも爬虫類でも同じはずだ。ならば、爬虫類がだるさを感じたときに、いつでも体力を回復できる環境を、元気なときには必要ないのだとしても用意しておくことで、大きな病気にかかるのを防ぐことができるのではないだろうか。
 もちろん、「いつもよりだるそう」程度のことに飼育者の側で気づけるのであれば、その時点で対処をしてもよい。けれども、爬虫類の「ちょっとだるい」には、よほどの熟練者でなければ、そうそう気づくことはできないだろう。
 だからあらかじめ、病気の治療に必要な温度の場所を設けておくことが、病気の予防に有効なのではないかと思ったのである。
 28℃で飼えるよ、と言われても、35℃くらいの場所を設けておく。
 そういうリスクヘッジを、とりわけ初心者の場合には採用した方がいいのではないだろうか。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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