悩みまくった6時間

      2016/03/18

 ジャパンレプタイルズショー2014Summerに行ってきた。
 毎年静岡市のツインメッセ静岡で開催される、日本最大の爬虫類イベントである。
 他のイベントの中にはテレビ局が主宰するものがあるにも関わらず不思議なことだが、ゲストに芸能人を呼べる、唯一の爬虫類イベントでもある(ガッキー呼んで欲しい)。
 まあ、それはどうでもいいんだけれど。
 10時の開場と共に入場し、16時過ぎまでぐるぐる歩きまわっていた。
 1周観てまわるだけなら2時間もあればお釣りの来るイベントでなぜ6時間も粘っていたかといえば、ひたすら迷っていたからである。
 新しい生体を買うかどうかで。
 ニシアフリカトカゲモドキ以外は買わない、というルールを自分に課しているので、他の個体に惑わされる、ということはなかった。しかし、そのニシアフリカトカゲモドキを買って帰るかどうか悩んでいる内に、気がついたら夕方になってしまったのである。
 ニシアフを出品していたブースの間を、たぶん20周くらいした。何度も何度も手にとっては戻し、を繰り返した。売り子の人たちには変な人だと思われたことであろう。
 おまけに、それに気を取られすぎて、惑わされないどころか他の生体にほとんど気がまわらなかったので、テイラートカゲモドキとパターンレスのトッケイとレッサーアンティールイグアナを除くと、印象に残っているものがまったくないし、写真も撮っていないという始末。
 せっかく、商業ルートにのる爬虫類が日本一見られる場所にいたのに、なんとももったいない結果になってしまった。
 勝ち負けで言えば、完全に、「負けた」と言っていいであろう。
 敗因ははっきりしている。
 強迫観念に駆られていたのだ。
 イベントでもなければ、おいそれとニシアフは買えないぞ、と。
 そういう意識に囚われていたせいで、判断力が曇っていたのだ。
 ニシアフリカトカゲモドキのモルフは、ヒョウモントカゲモドキに比べればまだまだ高い。オレオやゴーストといった、誰が見ても見るからに「おおお」となるものは、数万円ではきかないことがざらである。そのあたりには、「トカゲで身を滅ぼしてもいい」と覚悟でもしていなければ、20代では準備なしにはちょっと手が出せない。となると、おのずと目のいく先は、(ホワイトアウトとアルビノはもういるから)グラニット(ノーマルの縞模様の色の薄い方の縞に濃い色の斑点が多く浮かぶ)やアベラント(ノーマルの縞模様が崩れている)といった、2万円台から買えるモルフになる。しかし、これらのモルフは、見栄えがいかにも「微妙」である。「ノーマル」との差が質的なものではなくて、量的なものだからだ。ノーマルとして売られている個体にも、それっぽいやついるよね、というものである(くぬぎにも多少斑点はある)。となると、あとは個人的な美意識の話になってくる。それが美しいかどうか、買いかどうかは、それぞれの感性に委ねられてくるわけだ。
 そして、その時発揮される審美眼は、状況によって容易に曇る。
 かりに都内に住んでいて、爬虫類ショップを仕事帰りにでも数軒見てまわれるのであれば、冷静な判断ができるだろう。自分的にはこれは値段とは釣り合わないと思えば、さらっと「パス」することができる。またの機会にニシアフに強いショップに行けば、眼鏡にかなう個体が入荷しているかもしれないと考えることができるからだ。それに東京であれば、出展していたショップが近所にある可能性が他の地域より高いから、あとから欲しくなったとしてもすぐショップに買いに行けたりする。だから気持ちに余裕が生まれる。
 でも、田舎に住んでいるとそうはいかない。田舎は、イベントが近くに来なければ、爬虫類を買う機会がほとんどないのだ。コーンスネークやヒョウモントカゲモドキならまだ手に入るが、ニシアフリカトカゲモドキくらいになると、CB自体にほとんどお目にかかれない(やまももがホームセンターで売られていたのは奇跡である)。WCでも、柄が選べるほど流れてこない。都市部と違って、田舎では、「この機を逃したらもう二度とお目にかかれない」という事態に、ほぼ確実になるのである。
 すると、冷静であれば「なし」と判断する個体であっても、「いや、いちおキープしといた方がいいんじゃないか??」とつい考えてしまうようになる。工学部で女子の株が自動的に釣り上がるのと同じような状況だ。「ニシアフである」というだけで、なんだか買っといた方がいいような気持ちになってしまうのだ。ニシアフがほとんど流通しない地域にいると。
 そのせいで、「今回はまあいいか」という結論に達するまでに、6時間もかかってしまったのである。
 イベントは、ありがたいものだが、文字通り有り難いものであるがゆえに、かように人心をかき乱すのだ。
 そんな我々にとって、「次は来年」ではなくなったことは、とても心やすらぐことであると言える。
 レプショーが年2回開催になったのは、精神衛生上とても助かることである。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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