大事なのは体重の「変化」である

      2016/03/18

 体重は、飼育動物の健康状態を把握する上で、重要な指標のひとつです。動物の栄養状態の変化は、体重の変化に如実に現れるものだからです。これといった症状が出ていないときに、「体重が減っている」ということから、その動物の異常に気がつくことも少なくありません。もちろん、そういうときには見た目にも変化が表れているのですが、日々わずかずつ変化していくものを、私たちはしばしば見逃してしまいがちです。髪は毎日少しずつ伸びていますが、鏡の前で「髪伸びたなぁ」と気がつくのはたいてい数ヶ月経ってからですよね。体重という数値を測っておけば、そのような見逃しを防ぐことができます。そのため、飼育を始める人には、こまめな体重測定をすることがしばしば薦められます。
 しかし、体重を記録する上で注意していただきたいことは、「1度の体重測定の結果」は、それだけでは、たいした意味を持たないということです。
「今日測ったら、うちのレオパの体重は55gでした」
 それだけでは、そのレオパの健康状態について、何を語ることもできません。身長170cmの人の体重60kgと、身長150cmの人の体重60kgではまったく意味が違うように、個体の体長がどの程度であるかによって、同じ体重でも、適性かどうかの判断は変わってくるからです。レオパにとって55gは太りすぎか痩せ過ぎか、という問いには、厳密には、「個体による」としか答えようがありません。
 目の前にいきなりぽんと出された動物が「痩せているか否か」「太っているか否か」は、体重ではなく、基本的に見た目と感触で判断します。相手が人間であれば、初対面の相手が肥満かどうかは、誰でも一発で判断できますよね。その時私たちは、頬の張り具合だとかお腹の出っ張り具合だとか、二の腕がぷにぷにしているかとか、そんなもので判断しているはずです。動物でも同様で、いくつかの特徴に着目することで、栄養状態を判断するのです。牛や豚などの産業動物や、犬猫では、「骨の浮き具合」を目安に栄養状態を5段階評価する、BCS(ボディ・コンディション・スコア)という指標が用いられています。
 体重という指標が役に立つのは、あくまで、「経時的な変化」を追った場合に限られます。
 以前の値と比べて、増えたか減ったか。それを見ていくことではじめて、「成長期なのに先月より体重が減っている。変だな」というような判断ができるようになるのです。「まだ下痢はしているけど、はじめより体重は増えてきたからいい方向だな」とか。
 定期的に測定をし、その「変化」に着目するのが、体重という指標の正しい使い方です。
 1回の測定の、「数値そのもの」にあまりとらわれてはいけません。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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