トカゲモドキの性的二型と闘争行動について

      2016/02/22

 トカゲモドキの仲間には、縄張りをめぐって雄同士が激しく闘争をする種が多く見られます。また、雌雄に形態的な差異が認められるものが少なくありません。
 Body size, male combat and the evolution of sexual dimorphism in eublepharid geckos (Squamata: Eublepharidae)というタイトルの論文で、Charles UniversityのLUKÁS' KRATOCHVÍLらは、トカゲモドキの性的二型が雄同士の闘争行動と関連しているのではないかと仮説を立て、検証しています。
 LUKÁS'らは、チワワトカゲモドキ(Coleonyx brevis)、サヤツメトカゲモドキ(Coleonyx elegans)、ボウシトカゲモドキ(Coleonyx mitratus)、バンドトカゲモドキ(Coleonyx variegatus)、オバケトカゲモドキ(Eublepharis angramainyu)、ヒョウモントカゲモドキ(Eublepharis macularius)、ゴマバラトカゲモドキ(Goniurosaurus luii)、クロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae)、ニシアフリカトカゲモドキ(Hemitheconyx caudicinctus)、ヒガシアフリカトカゲモドキ(Holodactylus africanus)の10種のトカゲモドキのそれぞれについて、雄同士に闘争行動が認められるかどうか、雌雄に形態的な差があるかどうかを調べました。
 その結果、以下のことがわかりました。

  • サヤツメ、ボウシ、ヒョウモン、ニシアフリカの4種は雄の方が身体のサイズが大きい。オバケもその傾向がある。一方、チワワ、バンド、ヒガシアフリカ、ゴマバラ、クロイワの5種は、雌の方が身体のサイズが大きい。
  • ヒョウモン、ニシアフリカ、ゴマバラ、チワワ、サヤツメ、ボウシ、バンドの7種は雄の方が身体に対する頭の大きさが大きい。オバケもその傾向がある。ヒガシアフリカには雌雄差がなく、クロイワは雌の方が頭が大きい。
  • クロイワとヒガシアフリカには雄同士の闘争が認められない。それ以外の種には認められる。
  • クロイワとヒガシアフリカの雄には前肛孔(大腿の付け根あたりにある分泌腺の出口)が認められない。それ以外の種には認められる。

 これらのことからは、頭の大きさの雌雄差および前肛孔の有無は、雄同士が闘争行動をとるかどうかに関連していることが示唆されます。つまり、雄同士が縄張り争いをする種では、雄は前肛孔を持ち、雌に比べて頭のサイズが大きいということです。また、前肛孔からの分泌物は、雌雄間のコミュニケーションではなく、縄張りを主張するマーキングのために用いられている可能性が高いことが考えられます。
 一方で、闘争行動をとっても雌雄差が認められない種があることから、体サイズの性的二型は、雄の闘争行動の有無とは異なる要因によって生じていることが示唆されます。
 また、これらの結果をトカゲモドキ類の系統樹と照らし合わせてみたところ、トカゲモドキ類の共通祖先は「オス同士が縄張り争いをし、雄の方が身体と頭が大きく、雄が前肛孔を持つ」という性質を持ち、性的二型の消失や逆転、闘争行動の消失は、ある程度種分化が進んだあと、独立して起こったことがわかりました。
 著者らは、これらの性質はおそらく共通の遺伝的要因によって生じるものであり、独立した形質として扱うのは危険だろうと述べています。
 クロイワトカゲモドキとヒガシアフリカトカゲモドキのように系統的に離れた種に、同じような変化が独立して起こるところが、進化の面白いところですね。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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