なぜ爬虫類には温度管理が必要か

      2016/03/18

 人間の体温は、食物から取り込んだ栄養素の代謝や筋肉の収縮によって熱を産生することにより、常に37度前後に保たれています。これによって、生命の維持に必要な体内の化学反応を、効率的に進めることが可能になっています。
 人間とは異なりほとんどの爬虫類は、このように、体温を自律的に一定に保つ仕組みを持っていません。爬虫類の体温は、外部の温度環境によって変化します。気温が低ければ体温が下がり、気温が高ければ体温が上がる、という具合です。
 そのため、爬虫類は、自ら熱を生み出す代わりに、外部から熱を取り込むことによって、体内の化学反応が活発に行われるような温度に、体温を調節しています。
 昼行性の爬虫類を例にとると、朝、目覚めた彼らは、太陽の光を浴びて、活動に必要な温度まで体温を上昇させます。体温が十分に上昇すると、活動を開始します。
 活動を続けていると、筋肉の運動や食べ物の消化、外界からの熱によってさらに体温が上がっていきます。すると彼らは、体温が上がり過ぎないよう、物陰や土の中などに避難します。体温が上がり過ぎれば、人間と同じように熱中症になって死んでしまうからです。逆に、日陰で活動を続けて体温が下がってきた場合には、再び陽光のもとへ出て、体温を上昇させます。これを繰り返して、体温を一定の範囲に調節しているのです。
 そして、夕方になるとねぐらへ帰ります。日が沈み、太陽からの熱の供給がなくなると、気温は次第に低下していきます。それに合わせて彼らの体温も低下し、代謝が落ち、身体が休息モードに入ります。人間も睡眠時には体温を下げますが、それと同じことを外気温の変化に合わせて行うわけです。
 多くの場合、爬虫類を飼育する際に温度管理が求められるのは、このような事情があるからです。飼育者は、爬虫類が正常な代謝を行えるように、適切な温度環境を提供してやらなければいけません。
 このとき重要なことは、闇雲に暖めればいいわけではない、ということです。暖め方には、爬虫類の行動特性から導かれる「原則」があります。
 それは、第一に、「必ず温度勾配を作る」ということです。ケージの中に、温度の高い場所と低い場所を設けるということです。
 今説明したように、爬虫類は、温度の高い場所と温度の低い場所を行ったり来たりして、体温を一定に調節しています。ですから、飼育下でも、同じような行動がとれるようにしてやる必要があります。
 仮に好適温度が37℃だとして、ケージ全体が等しく37℃ならば、それ以上に体温は上がらないのだから問題ないのではないか、と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんがそれは違います。先ほど書いたように、捕食のために運動したり、食べた物を消化したりしたときには物理法則として熱が発生するからです。好適温度よりも温度が低く、これらの熱を容易に「捨てる」ことのできる場所がなければ、やはりオーバーヒートしてしまうのです。
 原則の第二は、特に昼行性の爬虫類の場合には、昼夜の温度差を作る、ということです。
 昼間は太陽からの熱によって気温が上がり、夜は気温が下がる。その変化に合わせて、彼らは活動と休息のリズムを作っています。ずっと温度が高いままでは、身体を休ませることができません。ですから、夜間は一部の熱源を切り、温度を低めに設定する必要があるのです。とはいってももちろん、眠っているからといって人間の体温が20℃になってしまうことはないように、基礎代謝を維持するための一定の温度は保たなくてはいけないわけですが。
 爬虫類用の保温器具に性質の異なる様々な種類のものがあるのは、暖める範囲や到達する温度の異なる複数の保温器具を組み合わせることによって、このような爬虫類の生理要求になるべく適切に応えるためです。煩雑に思えるかもしれませんが、上記のような爬虫類の特性が頭に入っていれば、使いどころは理解しやすくなるのではないかと思います。
 保温の方法で混乱したら、「爬虫類とはどういう生き物なのか」を思い出すようにしてください。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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