イグアナに気嚢システムが発見される

      2016/02/22

 イグアナが気嚢を用いて呼吸を行っていることが発見されたという記事を見つけました。

 Why lizards have bird breath: Iguanas evolved one-way lungs surprisingly like those of birds

 鳥類は、気嚢と呼ばれる器官を用いて、哺乳類に比べて効率のよい呼吸を行っていることが知られています。それと同様の呼吸方法を、イグアナも採用していることがわかったそうです。
 気嚢を使った呼吸方法の概略は以下のようなものです。
 まず、息を吸うとき、吸い込んだ新鮮な空気は、まず、肺ではなく後気嚢と呼ばれる袋に溜まります。同時に、肺の中に残っていた、酸素を吸収した後の古い空気は、前気嚢と呼ばれる袋に移動します。
 息を吐く時には、後気嚢に溜まった新鮮な空気が肺に押し出され、この空気から肺は酸素を吸収します。同時に、前気嚢に溜まった古い空気が気管から外へ出ていきます。古い空気が肺に逆流することはありません。このような仕組みによって、肺の中が常に酸素の豊富な新鮮な空気に満たされ、酸素を効率よく利用できるようになっています。

吸気時の気嚢

吸気時の気嚢

呼気時の気嚢

呼気時の気嚢

 この呼吸方法は、かつては鳥類でしか知られておらず、酸素濃度の低い上空で少ない酸素を無駄なく利用するため、つまり空を飛ぶための適応として発達したものだと考えられてきました。
 しかし、その後、鳥類の祖先である竜盤目の恐竜もすでに気嚢を持っていたことが、化石の形状から明らかになります。その結果、三畳紀からジュラ紀にかけての大気の酸素濃度が減少していった期間に、低い酸素濃度の中でも活動ができるように恐竜の仲間が気嚢を発達させ、鳥類はそれを受け継いだのだと考えられるようになりました(長谷川政美著系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 (BERET SCIENCE))。さらに近年、ワニやオオトカゲも同様の呼吸方法を採用していることがわかってきたことから、気嚢を使った呼吸方法の起源はさらに遡り、これらの動物の共通祖先が獲得したものであるという仮説が出てきました。イグアナも同様の呼吸を行うという発見は、この仮説を補強するものです。
 有鱗目(トカゲやヘビの仲間)とワニ目や鳥類とが分岐したのはおよそ3億年前と考えられていますから、その後、大気の酸素濃度が低下していく中で、それぞれのグループが独立に気嚢を発達させた可能性はあります。けれども、この仮説が正しくて、ワニ、有鱗目(トカゲやヘビの仲間)、恐竜及び鳥類がみな気嚢を受け継いでいるのだとすると、気嚢を持っている動物の方が、羊膜動物(=爬虫類、鳥類、哺乳類)の中では多数派、ということになります。ここに含まれていないのは哺乳類だけです(系統樹から言うと、カメもムカシトカゲも「向こう側」の動物です)。
 鳥類の呼吸方法はなんだか特殊なように思えますが、実を言えば、私たち哺乳類の方が、特殊な存在なのかもしれません。
1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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