シームレス

      2016/02/05

 作家の角田光代さんが、BRUTUSの2015年1月1日・15日号に、「家のあちこちに本を置く。」というエッセイを寄せている。
 その中で、角田さんはこんなことを書いている。

 私は書庫に憧れたことがない。こんなにあちこち本が置いてあって、いつもなんとなく散らかっている印象で、いっそ本がぜんぶ本棚に収まれば、うちも少しはすっきりとするだろうと思いはするが、書庫のような部屋にすべての本を収納するのには抵抗がある。ひとつには、やはり、きちんと収めると読もうという気持ちを忘れてしまう、という自身の性質ゆえだ。そして気軽に読みたいという気持ちもある。いちいち本置き場に本をとりにいくのではなく、さ、読むか、というときに、手の届くところに本があってほしい。

 本について、私も同じことを思っている。
 訪れる人がたいてい、「足の踏み場もない」と批判し、フィールドワーク中に、当時付き合っていた女の子から「部屋が汚い」とお叱りの電話がかかってくるような我が家だから、さすがに本棚に収めるくらいはしないとなぁ、と思うことはある。しかし、その本棚は、書庫という特別な場所ではなく、寝室や、リビングや、キッチンといった、生活の場の中にあって欲しい。ふとしたときに、いつでもさっと手にとって、本が読める環境であることが望ましい。コーヒーを淹れながら背表紙を眺め、すっと1冊抜き取って、そのままダイニングテーブルで読書する。それくらい、読書と生活がシームレスに繋がっている環境を維持したい。
 そして同じことを、私は爬虫類に対しても感じている。
 爬虫類飼育者の中には、マイホームに「爬虫類部屋」を設えることを夢見る人たちもいるが、私は、そのような特別な場所に隔離するのではなく、生活空間の中に爬虫類を置いておきたいと思っている。
 爬虫類に関しては、本のように思い通りにいかないの承知の上である。空調を完備した爬虫類部屋を別途設けたほうが、管理の上で圧倒的に優れているのは間違いない。普段人の姿がない方が、彼らも安心していたすことができるだろう。それでも、できることなら、動物たちには、いつでも目につくところにいて欲しい。
 コーヒーを淹れながら、本の背表紙を眺めてにやにやするのと同じように、トカゲモドキの寝顔を眺めて私はにやにやしたいのである。せっかく好きで飼っているのに、生活空間から隔離してしまってはつまらないではないか。生活と爬虫類も、シームレスにつながっていて欲しい。
 今、トカゲモドキたちは寝室にいて、朝起きたときと寝る前、休日にはベッドでごろごろしながら、姿を眺めてぐふぐふする日々を過ごしているけれど、もしこの先、もっと大きな家に住むことができるようになったとしても、平時には同じようにしたいなぁ、というのが希望である。
 寝室に爬虫類がいてもいい、という女子を、だから私は探し求めている。夫は爬虫類を持ち込むから寝室は別で、という事態を私はあまり望まない。
 夫婦の営みだってそれはもちろん、シームレスであって欲しいからである。

 すまない、ちょっと切腹をしてくる。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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