CITESについて

      2016/02/16

 爬虫類飼育を趣味とするときに、避けて通ることのできないのが「CITES(サイテス)」です。正式名称を、「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」というこの条約は、その名の通り、国際的な商取引によって、野生動植物が減少・絶滅することを防ぐことを目的としています。海外から個体を輸入することによって成り立っている爬虫類飼育趣味は、当然のことながら、この条約を無視して営むことはできません。
 そこでここでは、CITESの基本的な知識について、まとめておきたいと思います。
 この条約が締結されるきっかけとなったのは、1972年の国連人間環境会議でした。商取引によって多くの野生動植物が絶滅の危機に瀕している、あるいは瀕しうることを受け、この会議において、「特定の種の野生動植物の輸出,輸入及び輸送に関する条約案を作成し,採択するために,適当な政府又は政府組織の主催による会議を出来るだけ速やかに召集する」ことが勧告されたのです。その後、米国政府や国際自然保護連合が中心となって条約の作成作業が進められ、1973年3月3日に採択、1975年7月1日に発効されました。採択された場所が米国のワシントンであったため、日本では「ワシントン条約」とも呼ばれています。
 CITESには、Ⅰ類からⅢ類まで、3つの「附属書」が存在します。それぞれの附属書には、以下のような基準で、動植物の種を記載します。

附属書Ⅰ:絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けており又は受けることのあるもの。

附属書Ⅱ:現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが,その標本の取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種となるおそれのある種又はこれらの種の標本の取引を効果的に取り締まるために規制しなければならない種。

附属書Ⅲ:いずれかの締約国が,捕獲又は採取を防止し又は制限するための規制を自国の管轄内において行う必要があると認め,かつ,取引の取締のために他の締約国の協力が必要であると認める種。

 その上で、附属書Ⅰに記載された種については商取引の原則全面禁止、附属書Ⅱに記載された種については、輸出国輸入国双方の許可が必要、附属書Ⅲについては、当該国から個体を輸出する場合にはその国の許可が必要、というようにそれぞれ取引に制限を設け、国際取引による個体群の減少に歯止めをかけています。ただし、学術研究目的など、その取引に意義が認められれば、附属書Ⅰ類に記載された種でも輸出入が認められる場合があります。なお、規制の対象は生体だけでなく、死体や剥製、毛皮・骨・牙・角・葉・根など生体の一部、およびそれらの製品も含まれます。
 どの動植物種をどの附属書に記載するかは、2年に1度行われる締結国会議で決定されます。これまでⅡ類に記載されていた種をⅠ類に変更したり、どの附属書にも記載されていなかった種をいずれかの附属書に記載したり、あるいは逆に外したり、ということが、会議のたびに審議されます。去年まで大丈夫だったけど、今年からダメ、ということもありえるわけです。
 なお、それぞれの附属書に記載されている種は、CITES事務局のサイトで確認することができますが、学名での表記なので、ある種がCITESに記載されているかどうかを知りたい場合には、あらかじめ学名を調べておくようにしましょう。
 重要なことは、これは条約であり、あくまで国際取引にのみ効力を発揮する、という点です。一度どこかの国に輸入されてしまった個体のその国内での取引には、直接影響を与えることはできません。ただし、締結国にはCITESに準拠した国内法を整備することが求められており、いずれの国も、CITESに違反して取引された個体の国内取引を制限する法律を定めています。日本では、「種の保存法」がそれにあたり、附属書Ⅰ類に記載されている種の国内取引を規制しています。
 もっとも、国内で小売店から爬虫類を買っている場合には、CITESや種の保存法を意識することはほとんどありません。よほどアコギなお店でない限り、CITES的にクリーンな個体しか、店頭には並んでいないはずだからです。しかし、海外のイベントで生体を購入しようと思う場合には、自分で輸出入を行うことになりますから考慮せざるを得ません。また、これまでⅡ類だった種がⅠ類に昇格することはしばしばありますから、そうなったときに登録を忘れて御用、ということにならないように、締結国会議の動向には気を配っておく必要はあるでしょう。
 「種の保存法違反で逮捕」というのは、この趣味全体にかなりダーティーなイメージを植えつけますし、多くのエンドユーザーがこの手の知識を持っていることは業界の自浄作用としてはたらきますから、爬虫類飼育者はCITESについて、よく知っておいて欲しいと思います。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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