ニシアフリカトカゲモドキとヒョウモントカゲモドキの見分け方

      2016/02/05

 しばらく前に、ニシアフリカトカゲモドキの幼体が「壁ドン」をしている写真が、Twitterで「かわいい」と話題になりました。

 画像は3万を超えるリツイートを集め、ウェブメディアでも取り上げられるほどでした。

トカゲの赤ちゃんによる「壁ドン」がかわいすぎる! ヒョウモントカゲモドキ 、飼いたくなったじゃん… - トゥギャッチ

 まるで猫画像のような反響。これは、爬虫類画像としては異例のことです。
 私は、表示されたリツイート数を見て、とても嬉しくなりました。
 「来た、ニシアフの時代が!」と思わず小躍りしてしまったほどです。
 ところが、タイムラインを追っていくと、多くの人が、この写真に写っている動物を、別種の「ヒョウモントカゲモドキ」だと勘違いしていることがわかりました。このウェブメディアにしてもそうです。
 せっかく、ニシアフリカトカゲモドキの魅力が世に伝わるチャンスだったのに、これでは人気を、ヒョウモントカゲモドキに持っていかれてしまう……。このウェブメディアにしても、「ヒョウモントカゲモドキで検索して」とか書いてるし。ニシアフファンとして、それは看過できかねる事態です。知らないんだったら、余計なことを書かないでくれよ。
 私は、とても残念に思いました。
 いや、わかるんです。はじめにこの画像のトカゲをヒョウモントカゲモドキだと勘違いした人たちは、ヒョウモントカゲモドキへの有り余る愛ゆえに、そうしてしまったのだということを。彼らは、ヒョウモントカゲモドキのかわいさを訴えたくてしかたがなかった。それを訴えることのできる材料を探していた。そこに、ヒョウモントカゲモドキ「っぽい」トカゲのかわいらしい画像が流れてくれば、「これだよっ。これがヒョウモントカゲモドキなんだ!」と咄嗟に言いたくなったとしても無理はありません。誰も悪くはないんです。
 でも、ニシアフサイドからすると、申し訳ないのですけれど、やっぱり、ちょっと待てよ、と言いたくなるわけです。我々こそ、その画像でもって、「ニシアフはかわいいんだ!」って言いたいんですから。だってその画像は、ニシアフなんですから。誰も悪くなくても、もやもやする気持ちを抑えられないのです。
 そこで、以後、こんな切ない勘違いが起こらぬよう、今日はヒョウモントカゲモドキとニシアフリカトカゲモドキの見分け方を書いておくことにしました。

体色

 ヒョウモントカゲモドキとニシアフリカトカゲモドキは、確かによく似た姿形をしていますが、注意してみると、様々な違いがあることがわかります。
 まずは、全体像を見てください。

ヒョウモントカゲモドキ

ヒョウモントカゲモドキ

ニシアフリカトカゲモドキ

ニシアフリカトカゲモドキ

 上がヒョウモントカゲモドキ、下がニシアフリカトカゲモドキ。いずれも、改良品種ではないノーマルの個体です。
 ヒョウモントカゲモドキは、その名の通り、黄色の地に黒のまだら模様、ニシアフリカトカゲモドキは、茶色と焦げ茶色の縞模様をしており、カラーリングがまったく違うのがわかるかと思います。
 ただ、いずれの種も色彩変異のバリエーションが豊富で、模様がなかったり、地の色が違っていたりすることがあるので、「この柄だからヒョウモン、この柄だからニシアフ」と判別することは危険です。
 なので、色柄から両者を判別しようとする場合には、体色の「質感」をよく見てください。
 ざっくり言うと、ヒョウモントカゲモドキはほとんどの場合、水彩で塗ったような透明感のある色をしています。一方のニシアフリカトカゲモドキは、パステルで塗ったような不透明な色をしています。同じ「赤」でも、色の質感が異なるのです。唯一、ヒョウモントカゲモドキのうち、「マックスノー」「スーパーマックスノー」と呼ばれる品種だけは、不透明水彩のホワイトのような色をしているので紛らわしいですが、縞模様ではなくまだら模様を纏っているので、そこで判別をしてください。

 つづいての判別ポイントは、「目」です。
 上の写真でもわかるかと思いますが、ヒョウモントカゲモドキは、瞳孔の周りの虹彩の色(黒目の色)が淡く、瞳孔が目立っています。一方のニシアフリカトカゲモドキは、虹彩の色が濃く、瞳孔が目立ちません。目全体が、真っ黒に見えます。ほとんどの個体はこの原則に従うので、体色で見分けがつかなければ、目を見るようにしてください。ただし、ヒョウモントカゲモドキの中でも「エクリプス」と呼ばれるモルフは、真っ黒な目をしていることがあります。一方のニシアフリカトカゲモドキにしても、「ホワイトアウト」と呼ばれる品種の中には虹彩の色が薄いものがいます。わかりにくければ、次のチェックポイントに進みましょう。

顔つき

 目だけでなく、両者は、全体的な顔つきが異なります。イメージで言うと、ヒョウモントカゲモドキはキツネ顔、ニシアフリカトカゲモドキはタヌキ顔、というところでしょうか。

ヒョウモンの顔

ヒョウモンの顔

ニシアフの顔

ニシアフの顔

 写真を比べてみると、ヒョウモントカゲモドキはやや扁平で横長の顔をしており、ニシアフリカトカゲモドキは円筒形で丸い顔をしていることがわかるのではないかと思います。この顔つきの傾向は、品種によってばらつくこともないので、迷ったときには顔を見るのがいちばんかもしれません。

尻尾

 さらに両者は、尻尾にも違いがあります。
 ヒョウモントカゲモドキ、ニシアフリカトカゲモドキとも、尻尾に脂肪を蓄える性質のあることは共通しています。ですから、両者とも、普通のトカゲに比べると太く、ぼってりとした尻尾をしているのですが、その「程度」に差があるのです。

ヒョウモンの尾

ヒョウモンの尾

ニシアフの尾

ニシアフの尾

 ここに挙げたのは、両者とも、尻尾に十分脂肪を蓄えた状態の写真です。比べてみると、ヒョウモントカゲモドキの方が身体に対する尻尾の長さが長く、ほっそりとしていることがわかります。ニシアフリカトカゲモドキは、より太短い、ぼってりとした尻尾をしています。
 尻尾の太さは栄養状態によっても変わってくるので、絶対的な指標にはなりませんが、ポイントのひとつとしては有効です。

 ヒョウモントカゲモドキとニシアフリカトカゲモドキは、だいたい同じような生活をするトカゲです。けれども、ヒョウモントカゲモドキの方が、陽気で活動的な面があります。
 活発さの違いを反映しているのか、両者では、足にも微妙に違いがあります。

ヒョウモンの前足

ヒョウモンの前足(協力:ジャンボエンチョー富士店)

ヒョウモンの後ろ足

ヒョウモンの後ろ足(協力:ジャンボエンチョー富士店)

ニシアフの前足

ニシアフの前足

ニシアフの後ろ足

ニシアフの後ろ足

 ヒョウモントカゲモドキの方が、ニシアフリカトカゲモドキに比べて、足全体の長さも、指の長さも長いのです。
 付け加えるなら、ヒョウモントカゲモドキは足の鱗が隆起してごつごつとしており、ニシアフリカトカゲモドキはなめらかであることも違いのひとつです。

 いかがでしょうか。伝わりましたでしょうか。
 およそ、以上のポイントを押さえれば、外見からヒョウモントカゲモドキとニシアフリカトカゲモドキを見分けることができるのではないかと思います。件のツイートのトカゲは、黒目であること、指が太短いこと、後ろ足の鱗がなめらかなことから、ニシアフリカトカゲモドキと判定できるでしょう(詳しい人は、「ホワイトアウト」という品種のカラーリングを知っているので、細かいところまで見なくても一発で判断できるのですが)。だから、検索するときは、「ヒョウモントカゲモドキ」ではなくて、「ニシアフリカトカゲモドキ」で、どうかよろしくお願いしたいと、こう思うわけです。
 まあ、管理人の贔屓はさておき、両者をきちんと見分けることは、おそらく、彼らを飼育しようとするときに重要なこととなります。
 ニシアフリカトカゲモドキは、ヒョウモントカゲモドキに比べて、乾燥や低温に弱いトカゲです。飼育する際、ヒョウモントカゲモドキならケージ全体が乾燥していても平気なのですが、ニシアフリカトカゲモドキの場合は、必ず、湿った場所を用意してやらなくてはいけません。ヒョウモントカゲモドキをニシアフリカトカゲモドキと間違えて飼っても問題はありませんが、ニシアフリカトカゲモドキをヒョウモントカゲモドキだと思って飼うと体調を崩す恐れがあるのです。実際、ニシアフリカトカゲモドキの飼い方がよくわからなかった過去には、ヒョウモントカゲモドキと同じような飼い方をされて命を落とした個体がたくさんいたようです。両者を取り違えることは、少なくともニシアフリカトカゲモドキにとっては、不幸なことなのです。
 画像を見て、「かわいい」とはしゃぐだけならば、どちらがどちらでもよいかもしれません。けれど、もし、「こんなトカゲを飼いたい」と思ったのなら、間違えないようにしてください。
 よろしくお願いいたします。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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