小さなケージにおすすめの保温方法

      2016/04/09

 さて、10月に入り、次第に外も涼しくなってきた。温暖な静岡県でも、半袖では肌寒く感じる夜が増えている。
 そろそろ、爬虫類たちの本格的な保温を考えるべき時期である。
 トカゲモドキケージの保温方法については、去年書いているので詳細は繰り返さない。ひとつだけ、注意点を挙げるに留めたいと思う。
 小さなケージで、安定した温度環境を作るのは難しいぞ、ということである。
 60cm以上の大きなケージで飼育している人もいるかもしれないが、たいていの人は、もっと小さなケージでトカゲモドキを飼育していることだろうと思う。レプタイルボックスとか、グラステラリウムの幅30cmくらいのタイプとか。
 ケージを置いている部屋全体を加温しない状態で、その小さなケージの中だけ、安定的に30℃前後を保つ、というのはけっこう難しい。お風呂のお湯に比べてコップのお湯が冷めやすいのと同じで、小さなケージの中の空気は、部屋の冷たい空気に晒されて、どんどん冷めていくからだ。出力の小さなヒーターでは、温めるそばから冷やされて、ちっとも温度が上がらなくなってしまう。かといって、ヒーターの出力をあまり強くすると、ヒーター付近の温度が逆に高くなりすぎるおそれがある。天気予報では雨だったから、寒くなると思ってヒーターを強めにかけていったら、ぴーかんに晴れてケージ内が煮えた、みたいなこともないではない。小さなケージは不安定で、ちょっとしたことで温度が乱高下しやすいのだ。
 環境を安定させるのであれば、エアコンをつけてしまうのがいちばん手っ取り早い。しかし、私のように10頭以上の爬虫類(と猫)を飼育しているならともかく、トカゲモドキ1匹のためにエアコンをつけっぱなしにするのは経済的ではないだろう。だから、トカゲモドキを1頭だけ飼っているような人にはその「間をとる」という作戦をおすすめしたい。
 トカゲモドキの入っている小さなケージを、大きなケージの中に入れて、その大きなケージごと保温するのである。
 ケージを2重にすると、外側のケージと内側のケージの間の空気が断熱材としてはたらき、内側のケージから熱が逃げるのを防いでくれる。内側のケージから離れた場所にヒーターを設置することもできるので、オーバーヒートもしにくくなる。内側のケージの中の環境を、安定させやすくなるのである。
 むろん、外側の容器は必ずしも飼育容器でなくていい。観葉植物用のガラス温室でもいいし、衣装ケースでも、断熱性を期待して発泡スチロールの箱でもいい。内側のケージの周りに、一定量の空気を確保できるものならなんでもいいのだ。
 エアコンを24時間稼働させるのはちょっと厳しい、という人は、今のうちに、その手のものを用意しておくことをおすすめする。きっと、冬を越す苦労を軽減することができるはずだ。
 ただし、この方法にはひとつ欠点がある。
 プラケースがひとつだけ入った60cm水槽を眺めていると、その余ったスペースに、もうひとつプラケースを置きたくなるという欠点である。
 そこにケースを置こうが置くまいが、そのスペースを適温に保たなければいけないことに変わりはない。そこにケースを置こうが置くまいが、光熱費は変わらない。
 ならば、ケースを置いてしまった方が、費用対効果は高いのではないか。
 頭が無意識のうちに、そう算盤を弾いてしまうのを止められなくなるのである。
 気が付くと、1匹だったはずのトカゲモドキが、2匹に増えている。
 爬虫類の場合、0から1、1から2へのハードルは、それなりに高い。しかし、1度それらのハードルを越えてしまうと、以降のハードルはないに等しい。次の冬には、きっと部屋ごとエアコンで加温していることになる。
 ケージinケージの方法は、効果的な保温方法だが、底なし泥沼化を招くリスクを孕んでいるのだ。
 読者のみなさんは、私がそれを狙って推奨しているという点を十分に考慮して、採用するようにしていただきたい。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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