野生動物を飼うならば

      2016/02/05

 近年では、ペットショップで見られる動物の種類も、ずいぶん増えてきました。ハリネズミにフクロモモンガ、様々な種類のフクロウに爬虫類両生類。専門店に行かずとも目にすることのできる動物の種類は、ずっと豊かになっています。
 それに伴って、そのような動物たちを飼育する人の数も増えてきたようです。展示即売イベントの来場者は年々増加しているようですし、ショップや爬虫類カフェでたくさんの飼育者の方の姿を見かけるようになりました。このブログは爬虫類が好き、という方に向けて書かれていますから、読者のみなさんの中にも、これらの動物を飼育されている方がきっとたくさんいらっしゃることでしょう。あるいは、今は飼育していないけれど、これから飼ってみたい、という方もいらっしゃるかもしれません。
 いわゆるエキゾチックアニマルを飼育することは、犬や猫を飼育するのとはまた違った、独特で素敵な体験です。彼らと過ごす日々は、きっとよい思い出に、心の糧になってくれるはずです。ですから、関心を持った方は、ぜひ1度、体験してみて欲しいと私は思っています。
 けれど、エキゾチックアニマルを飼育するにあたっては、心にとめておいて欲しいことがひとつあります。
 それは、彼らを飼育下におくことは、端的に自然からの簒奪である、ということです。
 あなたが買おうとしている動物が、WC、つまり野外で捕まえてきた個体である場合には、それは明らかです。たとえ飼育のためであろうとも、野生個体群から個体を引き抜いてくるわけですから、個体群が受ける影響としては、「毛皮を取るために構成個体を撃ち殺された」のとなんら変わりはありません。それが回復可能なものであれ、不可能なものであれ、「個体数が減少する=個体群がダメージを受ける」という点では同じです。回復不可能であれば、絶滅に繋がることもあるでしょう。実際、ある種のリクガメは、ペットにするために大量に捕まえられた結果、個体数が激減し、保護が必要な状態になってしまっています。WC個体を飼育するとは、「そういうこと」なのです。
 では、CB、つまり飼育下で繁殖させた個体を入手する場合には、どうでしょうか。それならば、一見、野生個体には影響を与えていないように思えます。
 けれども、少し視野を広げてみると、それが誤りである、ということがわかります。
 なぜならば、地球上の資源の量は有限だからです。
 飼育下でトカゲを1匹育てるということは、トカゲ1匹分の資源を、自然界からとってくる、ということです。たとえ与えているのがペットショップで買った冷凍コオロギだったとしても、それは変わりありません。そのコオロギを育てるために何を餌として与えたのか、その餌を生産するためにどうしたのか、とたどっていけば、いつか必ず、自然界にたどり着きます。人間は、自然界からエネルギーと物資を得なければ、野菜も、餌用コオロギも生産することができないのです。ですから、私達が飼育下でトカゲを1匹育てれば、「トカゲ1匹分」の資源が、自然界から失われることになります。そうなると、当然のことながら、自然界で育つことのできるトカゲは、1匹少なくなります。それは、自然界からトカゲを1匹捕まえてくることと、理論的には変わりありません。もちろん、理論と現実は違います。でも、CBだからといって、野生個体群に影響を与えていないとは、言えないのです。
 もっとも、私たちがなにをしようが、結局は自然界の資源を消費することになるのですから、それをもって「やめるべきである」とは言えません。フクロウを飼うのをやめて、代わりに鶏を飼ったとしても、資源を消費することは同じです。そんなことを言い出したら、猫を飼うことだって、フィギュアをコレクションすることだって、レストランで豪華なディナーをとることだって全部、「やめるべきである」ということになってしまいます。そういう主張をされている方も現にいらっしゃるわけですが、それはあまりに非人間的な主張と言うべきでしょう。それならいっそ、資源の浪費を抑えるために人間は死んだ方がいい、ということになってしまいますが(なにしろ産業革命はおろか農業を発明する以前から、人間は大型野生動物を軒並み滅ぼしてきたのですから)、地球を守るために活動家が自殺した、という話は聞いたことがありません。たぶん彼らも本気では言っていないのでしょう。
 けれども、エキゾチックアニマルを飼育している私たちは、人間の活動によって影響を受ける生き物たち「そのもの」を娯楽の対象にしている以上、そのことには自覚的でなければいけない、とは思うのです。
 エキゾチックアニマルを飼育するのであれば、ただ「かわいいかわいい」で終わるのではなく、彼らを育んできた自然そのものにも、関心を向けて欲しいと思います。でなければ、この趣味は、過激な自然保護論者が主張するように、本当に自然からの簒奪で終わってしまいます。そうさせないためには、「そうでなければ関心を持たなかったであろう自然に、この子の存在を通じて関心を持つようになった」という既成事実が必要です。アクションを起こすことは難しいかもしれません。それでも、せめて、知っては欲しいな、と思うのです。
 それが、私たちを楽しませてくれている自然に対する、恩返しになるのではないか、と私は考えています。
 まずは、自分の飼っている動物の生息地を、Google Earthで覗いてみるところからでも、始めてみてはいかがでしょうか。

 ニシアフの住んでいるところ。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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