やまももの脱皮不全

      2016/02/23

 先月、不覚にもやまももを脱皮不全にしてしまった。
 通常、ニシアフリカトカゲモドキはヘビのように一気に古い皮を脱ぎ捨てる。あ、皮膚が白いな、と気がついた次の朝には、すっかり脱皮を終えてぴちぴちの新しい皮膚に生まれ変わっているのが普通だ。いつまでも古い角質をまとったままだったり、ぼろぼろと部分的に向けていくような時には、その時点で脱皮不全と判断して過たない。その時のやまももは、まさしくそんな状態だった。背中側の角質は浮いているものの、おなか側と顔周りの角質がべちゃりと新しい皮膚にこびりつき、脱皮ができなくなっていたのだ。
 慌ててやまももと手に取り、背中からお腹にむけて角質をそっと引っ張ってみた。しかし、どうしても途中でちぎれてしまい、おなか側の角質を剥くことができない。
 しかたがないので、温浴をさせ、残っている皮膚を取り除く。

温浴

脱皮不全解消のための温浴

 幸い、お腹と指先は、軽く湿り気を与えるだけでするすると剥けてくれた。
 問題は目の周りだった。
 まさか、顔をお湯に沈めて剥いでやるわけにもいかない。代謝が低く哺乳類より息が長いから、窒息させることはそうそうないとは思うけれど、暴れてお湯を誤嚥でもしたら大変だ。
 生理食塩水で湿らせた綿棒を使って、やさしく拭ってみるものの、いまいちうまく剥がれてくれない。
 そうして、手をこまねいているうちに、残った角質が悪さをしているのか、瞼が腫れて目を開けにくい状態になってしまった。視覚は奪われていないし餌も食べられるけれど、半目開き以上に目が開かないのだ。
 まずい、と私は思った。
 残った角質が邪魔をして次の脱皮にも失敗したら、状態は悪化しそうな気がしたからだ。

脱皮不全のやまもも

脱皮不全のやまもも。目の周りに古い角質が残っている。

 そこで、次の手としてアリオンシェッドを使ってみることにした。

アリオンシェッド

アリオンシェッド

 アリオンジャパンから発売されている、爬虫類用の脱皮促進剤だ。
 生体に直接スプレーすることで、皮膚に潤いを与え、新陳代謝・古い角質の剥離を促し、健全な脱皮をサポートすることができる、と謳われている。
 これを使えば、少なくとも次の脱皮では、綺麗に脱いでくれるかもしれない。
 残った角質による感染が起こらないよう抗生剤入りの眼軟膏を塗りつつ、1日おきにアリオンシェッドのスプレーを始める。生体の目を傷めない、とパッケージには書いてあるけれども、顔周りは念のため目を閉じさせてから液体を吹きかける。

アリオンシェッド噴霧後

アリオンシェッド噴霧後。角質が目立たなくなっている。

 もちろん、ケージ内の湿度環境にも手を加える。今までは、ウェットシェルターの下にパネルヒーターを敷いていたけれど、そのせいでシェルター内の土がすぐに乾いてしまい、シェルターに水を貼っていても腹側が乾燥しがちだった。そこで、ヒーターを動かし、シェルターのない側の半分を保温するようにした。これで、シェルターの中は湿った環境を保つことができる。
 毎日の霧吹きで吹く水の量も増やした。
 そうして、次の脱皮を待った。
 やまももの脱皮間隔は、だいたい2~3ヶ月に1度である。だからはじめのうち、私は長い戦いになると思っていた。しかし、実際には結果が出るまでにそれほど時間はかからなかった。2週間だ。残念ながら、その間にスプレーによって古い角質そのものが剥がれることはなかったけれど、へばりついた古い角質をすっきりさせようという反応がやまももの体自体にも起こったのか、早くも次の脱皮がやってきたのだ。
 勝負どころだった。
 再び白くなるやまももに最後(であって欲しい)のスプレーをし、仕事に出かけた。
 果たして、帰宅し、どきどきしながらケージを覗き込んだ私の目に飛び込んできたのは、見事に脱皮を完了させたやまももだった。皮膚はつやつや。目の周りにこびりついていた角質は、きれいさっぱりなくなっていた。

脱皮後のやまもも

綺麗に脱皮したやまもも

 もちろん、足先やお腹にも、古い角質は残っていない。完璧だ。いつもの美しいやまももである。
 私は、ほっと胸をなでおろした。
 これで繰り返し脱皮不全に陥るようであれば、なんらかの病気を想定しなければいいけないところだった。今回うまくいってくれたということは、少なくとも今は、脱皮不全に繋がるような疾患はない、ということだ。
 やまももはうちのアイドルである。長生きしてもらわなければ(主に精神的に)困る。
 うまく脱皮してくれて、ほんとうによかったと思う。
 とはいえ、腫れぼったい目でコオロギを追いかけるやまももはなんだか痛々しかった。
 今後はもっと管理に気を配らなければならない。

1986年生まれ。幼少期より生き物と戯れて育つ。2011年、東京農工大学農学部獣医学科卒業。同年より小動物臨床に従事。在学中から、WordPressを利用してブログを書き始める。ニシアフリカトカゲモドキと出会った2014年に内容を一新、爬虫類ブログ「とかげもどきのしっぽ。」を立ち上げ、現在に至る。ニシアフリカトカゲモドキをはじめ、多くの爬虫類と暮らしている。

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