トカゲモドキの系統発生について

 現在、地球上には6属30種のトカゲモドキが生息しています。彼らは、湿潤な森林から乾燥した草原まで、世界中の様々な環境に適応し、分布を広げてきました。
 そんなトカゲモドキの仲間たちは、いったいいつ頃、地球上に姿を現したのでしょうか? 
 トカゲモドキ科を含むヤモリ下目には、現在7つの科が含まれています。それらの科は、ヤモリ上科とヒレアシトカゲ上科という2つのグループに分けられます。ヒレアシトカゲ上科に含まれるのは、ヒレアシトカゲ科、イシヤモリ科(ミカドヤモリの仲間を含む)、カワリオヤモリ科(タマオヤモリの仲間を含む)の3つ、ヤモリ上科に含まれるのは、ヤモリ科(トッケイなど、いわゆるヤモリ)、トカゲモドキ科、チビヤモリ科(スキンクヤモリなどを含む)、ユビワレヤモリ科(ヘルメットヤモリなどを含む)の4つです。

ヤモリ下目の系統樹

ヤモリ下目の系統樹

 ゲノムおよびミトコンドリアDNAを用いた系統解析の結果は、およそ2億年前に、ヤモリ上科とヒレアシトカゲ上科が分岐したことを示唆しています。トカゲモドキ科は、その少し後、およそ1億8000万年前に、ヤモリ上科の他のグループと分岐して誕生したようです。地質年代で言うと、ジュラ紀前期。ディロフォサウルスが生きていたのと同じ頃ですね。これは超大陸パンゲアがローレンシア大陸とゴンドワナ大陸に分かれた時期と近く、大陸の分裂による地理的隔離の成立が、分岐に関係があるのではないか、と考えられています。パンゲアの分裂後、ローレンシア大陸(の主にアジア地域)でトカゲモドキ科が、ゴンドワナ大陸でその他のヤモリ上科のグループが分化していったようです。なお、現在はオーストラリア、ニュージーランド、ニューギニアに分布の限られるヒレアシトカゲ上科も、かつてはゴンドワナ大陸全体に広がり、種分化をしていきました。
 トカゲモドキ科内での分化は、およそ1億6000万年前はじまります。まず、オマキトカゲモドキ属が、他のトカゲモドキに繋がるグループから分岐しました。
 アメリカトカゲモドキ属が他のトカゲモドキと分岐してくるのは、およそ1億5000万年前のことです。この頃、この仲間は、アジアを離れ、現在の分布域であるアメリカへやってきたようです。
 アジアトカゲモドキ属、フトオトカゲモドキ属、ヒガシアフリカトカゲモドキ属の3属は、さらにその後、キョクトウトカゲモドキ属が西へ分布を広げ、多彩な環境に適応していく中で生まれてきました。これら3属とキョクトウトカゲモドキ属の分岐は、およそ1億2000万年前だと考えられています。
 アジアトカゲモドキ属と、現在アフリカに分布する2つの属との分岐は、およそ1億年前と考えられていますが、この時期には、まだ、ユーラシア大陸とアフリカは繋がっていませんでした。アフリカがユーラシアと繋がるのはおよそ2000万年前のことです。フトオトカゲモドキ属、ヒガシアフリカトカゲモドキ属は、ユーラシアでアジアトカゲモドキから分化した後に、アフリカへ渡ってきたようなのです。この2属が分岐したと考えられているのもおよそ9000万年前ですから、ユーラシア大陸の中で、トカゲモドキの属レベルの分化は完了していたことになります。

トカゲモドキ科の系統樹

トカゲモドキ科の系統樹

 なお、このような分岐の順番から、キョクトウトカゲモドキ属は、トカゲモドキ科の祖先の特徴を色濃く残した「生きた化石」と考えられ、重要視されています。地球上に誕生した最初のトカゲモドキは、沖縄のクロイワトカゲモドキのような姿をしていた可能性が高いのですね。トカゲモドキというと、ヒョウモントカゲモドキが家元のようになっていますが、本当は、キョクトウトカゲモドキの仲間が本家筋なのです。翻って、フトオトカゲモドキ属やヒガシアフリカトカゲモドキ属は、トカゲモドキ科の中では新しいグループ、ということになります。

クロイワトカゲモドキ

「生きた化石」クロイワトカゲモドキ

 いずれにせよ、トカゲモドキ科の誕生はヒト科の誕生よりはずっと古いわけで、ジュラ紀から進化を積み重ねてきた彼らには、畏敬の念を抱かずにはいられません。系統樹を見ていると、大切に扱わなければ、という気持ちにさせられます。
 中生代の森林で、彼らはどんな暮らしをしていたのでしょうか。化石種が見つかるようであれば、ぜひ見てみたいものです。

参考文献
  1. Jonniaux, P., Kumazawa, Y. (2008). Molecular phylogenetic and dating analyses using mitochondrial DNA sequences of eyelid geckos (Squamata: Eublepharidae). Gene, 407, 105–115. doi:10.1016/j.gene.2007.09.023
  2. Pyron, R. A., Burbrink, F. T., & Wiens, J. J. (2013). A phylogeny and revised classification of Squamata, including 4161 species of lizards and snakes. BMC evolutionary biology, 13(1), 93. doi:10.1186/1471-2148-13-93

公開日:
最終更新日:2016/05/04