ニシアフリカトカゲモドキについて

 ここでは、このブログの主役、ニシアフリカトカゲモドキとはどんな生き物なのかについて説明します。
 ニシアフリカトカゲモドキは、動物界脊椎動物門爬虫綱有鱗目トカゲ亜目ヤモリ下目ヤモリ上科トカゲモドキ科フトオトカゲモドキ属に属する動物です。学名は、Hemitheconyx caudicinctus。英語圏では、African fat tail geckoと呼ばれています。geckoはヤモリ、fat tailとは「太った尻尾」のことです。ラクダが背中のコブに栄養を蓄えるように尻尾に栄養を蓄えるため、栄養状態の良い個体はでっぷりまるまるとした尻尾をしていることからその名前がつきました。新種記載されたのは1851年。命名者は、フランスの動物学者、オーギュスト・デュメリルです。

ニシアフリカトカゲモドキ

ニシアフリカトカゲモドキ

 成体は全長20〜25cmほどになります。ヤモリ下目に含まれますが眼瞼があり、趾下薄板がありません(趾下薄板とはヤモリが壁に張り付くために足の裏にしつらえている装置のこと)。基本的な体色は濃褐色・淡褐色のバンド模様。背筋に沿って白いラインが入る場合もあります。頭部が大きく、吻が短く、目が大きくて黒くうるうるしています。人間が「かわいい」と感じる外見的要素をすべて備えたスペシャルかわいい動物です。鱗を見ると蕁麻疹が出るというようなタイプの人でない限り、誰でもひと目でメロメロになるでしょう。
 生息地は、アフリカ大陸の中西部、カメルーンからセネガルにかけての一帯です。その一帯の、荒地や岩場、草原や森林に生息しています。地上性で、立体行動はほとんどしません。昼間は岩陰などに潜んで、夜になると餌を食べに出てくる夜行性の動物です。昆虫などの節足動物を餌にします。
 トカゲモドキの仲間の多くは、雄が縄張りを持ち、その域内に棲む雌を独占するハーレム制をとっています。ニシアフリカトカゲモドキもご多分に漏れず、雄同士は激しい闘争をします。ヒョウモントカゲモドキという別種のトカゲモドキの中には、縄張りを持たず、縄張りの主の目を盗んで雌と交尾をする間男的個体も存在するようですが、ニシアフリカトカゲモドキにそのような個体がいるのかどうかはわかりません。
 卵生で、雌はシーズンになると、1度に2~3個ずつ、3~5回の産卵を行います。
 おもしろいのは性別の決まり方です。
 トカゲモドキの仲間は、人間のように遺伝的に雌雄が決まっておらず、卵の中で胚が成長する間の温度で性別が決まるのです。厳密に言うと、温度によって、雄になる確率、雌になる確率が変化します。卵が成長するのに適切な温度はだいたい30℃前後ですが、その範囲のうち、低めの温度では雌が、高めの温度では雄が生まれやすいようになっています。もし、一卵性双生児が生まれたとして、条件によってはそれぞれ別の性になることもあり得るのです。生まれたばかりの幼体の性別は外見からではわかりませんが、卵を孵すときの温度を上手くコントロールすれば、性別のほぼはっきりした個体を手に入れることができます。
 もっとも、ある程度成長してしまえば雌雄判別は簡単です。

雌雄判別

雌雄判別

 写真を見てください。トカゲモドキは太腿の付け根にマーキングのための分泌腺を持っていて、腹側から見ると、その開口部を確認することができます。開口部は前肛孔(precloacal pore)と名付けられています。雄は雌に比べて、この前肛孔がよく発達し、ひと目でそれとわかりますが、雌ではほとんどわかりません。また、成熟した雄の尾の付け根には、ヘミペニスを収容するためのcloacal suckと呼ばれる膨らみがあります。雌にはこの膨らみはありません。
 これらの特徴により、容易に雌雄を判別することができるのです。
 最後に強調したいのは、この動物はとてもペット向きだということです。
 性格は温厚かつやや臆病、怒って咬む個体もいないではないですが、それほど攻撃性はないため扱いやすいです。ワイルド個体は突然ダッシュしたりするので注意が必要ですが、手乗りに育たなかったリスやハムスターのように触ることすら危険、なんて個体はいません。活動的ではないので比較的小さなスペースで飼育でき、特殊な環境も求めません。夜行性であるため、紫外線の照射も不要です。トカゲモドキの仲間の中では、ヒョウモントカゲモドキについでよく飼われる種であり、繁殖個体がたくさん流通しています。したがって、飼育によって野性個体群を圧迫するおそれもそれほどありません。品種改良もさかんに行われていて、アルビノなどの品種も流通するので、好きな色柄の個体を選ぶことができます。慣れれば繁殖を狙うこともできます。
 先ほど申し上げたとおり外観がかわいらしいことと併せて、よいペットとしての条件をかなりクリアしているのです。
 このブログを読んで、関心を持たれた暁には、ぜひとも飼育に挑戦していただきたい、と思います。
 よろしく。

参考文献
  1. Peter, U. (2015). THE REPTILE DATABASE. http://www.reptile-database.org/(accessed 2016-02-15).
  2. Pyron, R. A., Burbrink, F. T., & Wiens, J. J. (2013). A phylogeny and revised classification of Squamata, including 4161 species of lizards and snakes. BMC evolutionary biology, 13(1), 1.
  3. Sakata, J. T., & Crews, D. (2003). Embryonic temperature shapes behavioural change following social experience in male leopard geckos, Eublepharis macularius. Animal behaviour, 66(5), 839-846.
  4. Viets, B. E., Ewert, M. A., Talent, L. G., & Nelson, C. E. (1994). Sex‐determining mechanisms in squamate reptiles. Journal of Experimental Zoology, 270(1), 45-56.
  5. 海老沼剛(2010). 『爬虫・両生類飼育ガイド ヤモリ』. 誠文堂新光社.

公開日:
最終更新日:2016/05/14